義父の分厚い手帳

保険の外交員だった義父の分厚い手帳

A5サイズで厚さは6cmくらいあったか これが何冊かある

黒い革表紙で命よりも大切なくらいと言っていた

私 お父さんこんな手帳どこに売ってるの?

義父 どこでも売っとるよ

えー見たこと無い

中を開くと住所、名前、家族構成、等々・・・ 顧客リストと思いきや

顧客以外の情報が大半を占めるという

まだパソコンが無い戦後から担当地区が変わる度 手帳を追加購入

アパートや団地を片っ端から廻り 訪問ではなく

洗濯物やカーテン、玄関廻りの状態などから家族構成を推測するという

顧客訪問も大事だがその行き帰りの道中がホントの仕事

と言っていた 

名古屋弁義父は車で廻ると駐車場が大変でしょ 

バイクなら停め場所に困らんがねといつもバイクだった

アパートの空き部屋だったのが綺麗なカーテンが掛かれば

新婚さんが越してきたかな? 落ち着いた頃を見計らって旦那様の生命保険

オムツが干してあれば(昔は布オムツ)数年後に学資保険の勧誘に訪問

何年後かに顧客になってくれそうな家のリストが

小さな文字でビッシリ書いてあった

遺品を整理すると 感謝状や表彰状が何枚も出てきた

何度も管理職へ昇格の話があったが全て断り 

現場主義に徹底した人だった

その優しくて人当たりの良い風貌もあって売上はいつもトップ

義父上のモンの派閥争いに巻き込まれたくないし

お客さんところを廻っているのが一番楽しい

こんな話は私だけにしてくれたらしい 

義父の娘達はそんな話聞いたことなーい

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                             写真は葬祭場の生け垣です

大正十五年生まれの囲碁と釣りと書道が趣味の義父は逝きました

30年後 三途の川の河口でハゼ釣りをしている義父と再会できるでしょう

2年前他界した私の父も釣りが大好きで書道とカメラが得意な同じ大正十五年生まれ

私も加わり三人で竿を並べているかも知れません・・・

ウン 悪くないなあ・・・ところであの世に釣具屋さんてあるのか???